OUTLINE スロープの家・卍
PROCESS 設計関連(土地探しから設計まで)
スロープの家の建てたい(愛犬たちのために何ができるか?)
愛犬:ボーダーコリー2匹と愛猫と暮らす横浜市内に建てたペット共生住宅「スロープの家シリーズ PART2」です。
スロープの家の事例をご覧になったお施主様から、「スロープ」を前提に家づくりのオファーをいただき、
以前手がけた小型犬とは違い、知能や身体能力の高い活動的なボーダーコリーに相応しいスロープの家とは?という自分なりにテーマを与えプランを検討し始めました。
1/8勾配のスロープを使った内部の回遊距離に加え、外部空間の中庭だけでは必要な運動量には対応しきれないので、ピロティー、そして前庭へと連続させる構成を考えました
1/4階ずつスキップするフロアを中庭を中心に卍型に構成することで、外部から内部までの連続させながら昇降できる空間構成が適していることに気づきました。そこで、写真のコンセプトモデルをつくり、動線と空間の関係を説明しました。
そして、この概念モデルに基づいた計画案が成立する土地探しから、スタートすることになりました。
ネットと不動産会社とを併用しながら候補地を探す中で、気になる物件と出会いました。
ネットでクライアントさんが見つけた候補ですが、ロケーション、広さ、土地形状、道路付け等の諸条件もいい、建築に関わる法規的条件も問題ない
現地に足を運び、プロの目で調査してみるとなかなか周辺環境も良い
地番の安全度や水害マップ等を見ても問題ない
そして販売価格も魅力的
なぜ、このような好条件の土地が売れていないのだろう???
この既存の擁壁に違和感を覚えたので、役所に調査に行くと違法に改造を加えたものらしいことがわかりました。
■建築家からのアドバイス
擁壁は建築の荷重を支える宅盤を維持するための大切な構造体です。
この擁壁が構造的に効果がない場合は、建築の荷重が擁壁に影響しないように杭等で建築を支えたりする必要があります。
また、2m以上の高さの擁壁では、検査済証がないと「擁壁」ではなく、「崖」とみなされますので
不動産取得時には、対象敷地だけではなく隣接する敷地についても確認してください。
この擁壁を合法的かつ構造的に安全なものにするのに、どのくらいかかるのだろう???
そんな疑問を抱いたので、早速知り合いの工務店に「既存解体工事と宅地造成工事」の見積もり依頼
そして出てきた金額が「約1500万円!!!」
なるほど・・・
好条件の土地が売れていないのには、事情がある。
早速、クライアントさんに土地販売価格と解体造成の1500万円を加算すると想定以上の価格になるので、他を検討しましょうと提案しました。
お気に入りの土地情報だったのでクライアントさんも落胆されていましたが、そこは一歩踏み出すことが肝要!
不動産会社に条件をもっと緩くして探してもらうように依頼しましたので、
いろいろと情報は増えるのですが、なかなか断念した土地より魅力的なものが見当たらない
縁とは不思議なもので
なぜだか最初にピーンときたものに落ち着くケースが多いように思います。
クライアントさんも好印象を抱く土地候補がないようですし、断念した土地への未練がいっぱいだったので、もう一度検討することに・・・
方針としては、
1)売主さんに擁壁の造り直しに理解を求め土地販売価格を下げる交渉を行う!
2)既存解体工事と宅地造成工事を一括発注し、コストダウンを図る!
3)擁壁高さを2m未満にして、宅地造成申請対象から外す!
1)については、
大手の不動産会社の知人を通じて価格交渉をお願いし、減額成功
2)については、
あの手この手で探し出した土木会社と粘り強くネゴシエーションし、2/3以下まで鬼の減額
3)については、
土木会社の担当者と作戦を練り、自治体と交渉し、宅地造成申請不要との回答ゲット
■建築家からのアドバイス
不動産情報に掲載されている土地の販売価格は飽くまで売主側の希望価格です。
飼い主としての希望価格に歩み寄れるように交渉することが大切です。そのためにも
土地の購入に関わる費用が家づくりの総予算の中で、
どの程度までなら大丈夫なのかという予算配分を
建築家と相談して決めておくといいと思います。土地の購入が最終目的ではなく、
そこに希望する家を建てて、生活することが目的であるはずです。
より好条件の土地に変える
新しく、より強固な擁壁で宅盤を安定させることになり、行政が提供している標準仕様の鉄筋コンクリート造の擁壁に造り替えることになりました。
宅造コストが2/3以下に圧縮したとはいえ、高価であることは間違いないので
それに見合ったメリットを創出するのが建築家の仕事です。
既存の傾斜した大谷石積み擁壁に比べ、
垂直に築造可能な鉄筋コンクリート造の擁壁は敷地面積が最大限活用出来るというメリットがあることは言うまでもありませんが、それよりも今回は宅盤レベルを低くすることに力点を置きました。
宅盤レベルを低くするメリットとしては
1)擁壁高さを2メートル以下にすることにより、宅造申請を省略しコストダウン
2)既存建物基礎や擁壁解体時に削られる宅盤を補う土量を無くしコストダウン
3)約50㎝擁壁が低くなることで道路から見た場合の圧迫感が軽減できる
4)道路からのアプローチが緩やかなスロープにできるので駐車台数が2台確保できる
5)アプローチまでスロープになるので、コンセプトが家の内外に展開できる
5つのメリットにより、住環境は大きく向上することができそうです。
■建築家からのアドバイス
家を作るというのは、建築本体や内部空間を考えるだけに留まるものではありません。
周辺環境への配慮や外部空間との連続性等を配慮しながら、空間・環境全体をデザインしていくことが重要です。
量産化住宅にはできない、そこにしか成立しない、
住まい手のライフスタイルを最大限に活かせる家づくりこそが求められています。
土地購入契約
土地に関わる諸問題が解決し、
いよいよ仲介してくれた不動産会社で土地購入契約を締結することになりました。
土地探しからの家づくりを提唱する弊社としては、最初のハードルを乗り越えた瞬間でもあり
ホッとしていると同時に、これから具体的に計画を進める気持ちが引き締まる思いです。
調印の際にクライアントさんから驚きの発言が・・・
「実はまだ実際に土地を観ていないんです。Googleでは見ましたけど・・・」
不動産会社担当者も私もびっくり!!!
「だって、専門家の目に適った土地ですから、その方が確実だと思ってます。」
とてもありがたいお言葉でもありますが、責任の重さも痛感したものです。
ビジネスは信頼の上に成り立つものですが、ここまで信頼してもらえていることに感謝です。
不動産購入契約を交わし、対象不動産の引渡し後すぐに既存建物解体および宅地造成工事に着手できるように、詳細測量や解体対象構築物の調査で敷地に立ち入る許可を得て実施し、詳細な宅地造成計画案を策定し、解体工事・宅地造成工事契約も行い準備を整えています。
今回は住み替えになるので、後日、所有不動産の販売についても手続きが必要になりました。
■建築家からのアドバイス
信頼されるということこそ、ビジネスの第一歩
そしてその経験を積み重ねて信用を築いていくわけですが、
これがとても重要なことだと思います。
建築家が以前に関わった施主さんと良好な関係を築いていることが多いほど
この信用を揺るぎないものにしている証なので、
実際に昔の担当作品を一緒に見学することもお薦めです。
動線をデザインする
土地購入契約も済ませて、いよいよ計画も本格的にスタートです。
愛犬家住宅といえどもいろんなタイプがあります。
ブリーダーさんの愛犬家住宅
家族全員が愛犬が好きとは限らない愛犬家住宅
共働きで日中留守が多い愛犬家住宅
ペットサロンと併設する愛犬家住宅
そして、
今回のショードッグとの快適な暮らしと希望する愛犬家住宅
など多種多様です。
当然のことですが、それぞれ異なった視点から発想していくことが求められます。
WEBで スロープの家:SPAIRAL COURT のことを知って
オファーを頂いたクライアントさんの愛犬は
ショードッグのボーダーコリー
人間でいうならば、スーパーモデルのような愛犬です。
スロープの家:SPAIRAL COURT はトイプードルと暮らす家だったのですが、
今回のボーダーコリーの運動量は中庭だけで完結する空間構成では対応できないほど活発なので、
中庭からさらに外庭にもつながる広がりのある動線を用意することが必要不可欠です。
そこで
リビング → 中庭 → ピロティ(パッサージュ) → 外庭
という連続性のある広大な運動場を創出する空間構成が望ましいと考え、コンセプトモデルでの検討を行いました。
模型の緑の部分は
中庭からピロティのパッサージュ(通路)を経由して外庭に連続していることを示しています。
スロープの家において、最も重要なことは「動線をデザインする」ことです。
その連続する動線に対して、必要な空間がどのように付加されて家として完成されていくというプロセスを模型をつうじて検討を重ねていきました。
■建築家からのアドバイス
愛犬家住宅にマニュアルはありません。
犬種、大きさ、癖、そして飼い方などを
話し合いながらカスタマイズすることが大切です。
完成引渡し後の様子を伺い対応策を検討し、実践する
そんな長いお付き合いができる建築家を選ぶことが大切だと思います。
模型で検討する
既存建物の解体や造成工事が進む中、建築計画は着々と進んでいきます。
私の場合は、計画のイメージスケッチと同時にコンセプトモデルの作成から着手します。
模型は目的やプロセスによって、作り方が異なります。
最初に作成する模型が白い模型が多いのは、空間イメージを確認する目的が強いので
それ以外の要素を無くしたシンプルなものが多いようです。
空間構成のコンセプトが概ね固まった段階で
その構成を活かした家全体のデザインイメージを考えていきます。
平面的なものと断面的なものを合わせた立体的なイメージを整理しながら間取りを考えているので、それをプランニングの段階で部屋として形にしていきます。
立体的な空間イメージを確認しながら、
光や風の取り入れ方や演出
色のイメージ
法規制の最終チェック
架構方法
構想していた愛犬や愛猫のための装置や家具の具体的なイメージ
などを付加していきます。
模型はクライアントさんに空間を説明するには最適なアイテムであると同時に
建築家自らが確認しながらデザインするためのアイテムでもあるのです。
■建築家からのアドバイス
模型を見るときは、全体を俯瞰的に眺めることも大切ですが、実際にそこに立ったり、歩いたりする自分をイメージしながら模型に目線を合わせて観ることが大切です。
動線分離(人・犬・猫)
人、愛犬、愛猫が快適に暮らす共生住宅
それには、共用空間とは別にそれぞれの動線を用意してあげることが大切です。
特徴的なスロープは主として愛犬のために用意したものですが、人や愛猫も主要動線として活用します。
さらに愛猫には、人や愛犬に干渉されない独自の動線を用意しています。
CATWALK
まさにその名どおりの愛猫専用動線です。
愛猫の動線は15㎝の幅があれば十分ですが、
愛猫がすれ違ったりするには30㎝以上の幅を確保しておくと良いでしょう。
そして、行き止まりではなく、必ず2方向の抜け道を用意しておくことで
複数の愛猫がストレスなく過ごせるように配慮してあげましょう。
■建築家からのアドバイス
愛犬の生活空間は「人の腰高」までの範囲が中心になりますが、
立体的な移動が好きで気ままな愛猫には「人の頭上」に専用動線を必要とします。
動線ショートカット
スロープの家では、その特徴であるスロープの性格上どうしても動線が長くなります。
この動線の長さが「立体的なドッグラン」としてとても重要なのですが、人の生活上どうしても動線を短くして連続させることが必要な場合があります。
その場合は、スロープに併設して階段を用意するといいでしょう。
この家の場合は、リビングとダイニングキッチンとの動線ショートカットとして高さ78㎝の階段を用意しています。
こうすることで、通常の人の動線は短縮され、空間的な連続性が確保できます。
■建築家からのアドバイス
客間のように愛犬があまり立ち寄らない配慮が必要なケースは、階段だけで連続するようにするのも一つの方法です。犬の性格によっては立ち入らないように格子扉を用意することも必要かもしれません。
愛犬のためのスロープ考
愛犬家住宅「スロープの家シリーズ」ではスロープの勾配を1/8としています。
つまり1m昇ぼるのに8mの水平距離を必要とする勾配です。
建築基準法では「階段に代わる斜路」の勾配を1/8以下と定めていますので、法令を遵守した勾配でもあるのです。
スロープといえば福祉の世界で定着してきましたが、手動の車椅子では1/12~1/15が一般的です。
しかし、土地価格の高騰している都市部に建つ一般的な住宅でそれを確保するのはなかなか困難ですので、電動車椅子でも昇降可能な勾配である1/8ならば、もし将来的に必要になったとしても対応可能であるということから、この1/8勾配を選択しています。
実際に昇降してみると、
普段の生活では使われないスネやフクラハギの筋肉が鍛えられることに気づきます。
これは高齢になっても歩行時につまづき難くなるトレーニングにもなるので、「愛犬のためのスロープ」は実は「人のためのスロープ」にもなっているように思います。
そして忘れてはならないポイントである掃除のしやすさですが、ロボット掃除機はこの勾配を苦にすることなく掃除してくれます。
愛犬・愛猫目線
愛犬家住宅・愛猫家住宅の設計で気をつけているポイントの一つに
「愛犬・愛猫目線」の配慮があります。
人とは目線の高さが異なっているので、スロープでの窓の位置やキャットウォークなどの通路の風景に配慮が必要だと思います。
愛犬の視線に配慮したスロープの窓は人にとっては地窓のように足元を明るく照らします。
愛犬・愛猫のために設けた窓
低い位置に設けた窓とはいえ、愛犬・愛猫の個体差により目線の高さが異なります。
水平に設けた窓はスロープの傾斜によって窓までの高さが異なるので、愛犬・愛猫たちは好みの窓を見つけてくれるでしょう。
人も動物も生きていく上で必要な居場所
そんな居場所を用意してあげることが必要不可欠です。
でも、快適な居場所を意図して用意するというのはとても難易度が高いことです。
個体差もありますし、生活環境によっても異なります。
また、居場所と言っても目的により異なります。
一人になりたい居場所
食事をする居場所
コミュニケーションをとりたい居場所・・・
その中でもコミニケーションをとりたい居場所というのは、どうやら目線の高さにヒントがあるように思います。
長いスロープの手すり壁の上が愛猫の通り道になっていますが、いつも止まっている居場所が決まっています。
飼い主さんとの目線が合わせられる場所
つまりコミニケーションをとりたいというメッセージを発信する場所ではないかと推測できます。
愛犬家住宅・愛猫家住宅を設計する際に目線の高さを重要視しています。
コミニケーション以外にも愛犬・愛猫の快適な居場所を見つけていくためには、まだまだ実践を積み重ねていくしかなさそうです。
キャットウォークとキャットラン
キャットウォーク
高い場所や狭い場所に設けるメンテナンス用通路の名称ですが、
愛猫家住宅においては、その名のとおり「愛猫のための通路」です。
お利口な愛猫は設計者の意図を理解してくれて、引越し後、すぐに活用してくれたそうです。
キャットウォークは愛猫だけが通ることのできる通路です。
明るい場所、ほの暗い場所、天井の高い場所、天井の低い場所など、変化のある風景を用意しておくと、愛猫はお気に入りの場所を見つけてくれるはずです。
スロープの家は主に愛犬のために考えた特徴的な空間構成(立体的ドッグラン)なのですが、
愛猫も積極的に走り回ってくれているようで、(立体的キャットラン)にもなっているようです。
そして、時には愛犬と愛猫の戯れ合う交流の場にもなっています。
また、スロープの手すりも猫専用のキャットランとして利用してくれています。
愛犬から邪魔されることのない、自分だけの専用通路は必須です。
運動量の増えた愛猫は、睡眠量も増えて健康的な暮らしをエンジョイしているとクライアントさんから教えていただきました。
スロープの家での愛猫の生活は私も初めてのチャレンジ
今後の経過も興味深いものです。
愛猫の爪とぎ対策1
愛猫と暮らす家で必ず考えなければならないのが「爪とぎ対策」です。
爪とぎといいう行為は愛猫の習性で、3つの意図があるようです。
1)古い爪を剥がして鋭い状態を保つ
2)匂いをつけて自分の縄張りをアピールする
3)ストレスを解消する
そんな愛猫たちは、柱、壁の端部、カーペットで爪とぎをするのが好きなのです。
そこで、家や家具を傷つけてしまわないようにいろいろと工夫が必要です。
爪切りやしつけで解決することも可能だとも言われていますが、
やはり、家づくりでの対策は必要です。
対策1)丈夫なカーペットを張る。
スロープ部分はグリップが効きやすいようにカーペットタイルを張っています。
ロボフロアという水や傷に強い製品を使っているので、スロープを歩行中に古くなった爪が自然に剥がれているようです。
対策2)柱や壁の端部に爪とぎの装置を設ける。
自分の縄張りをアピールする目的もある爪とぎですから、背伸びをして少しでも高い位置に爪の跡を残し、大きな存在であることを誇示します。
そのために最適な場所が柱や壁の端部です。柱には麻縄を巻きつけたり、壁の端部には麻縄パネルを取り付けたりすると効果的です。
麻縄がボロボロになりますので、新しいものと交換できるように着脱式になっています。
愛猫の爪とぎ対策2
愛猫の爪とぎで壁がボロボロになるという悩みをお抱えの方がたくさんいらっしゃいます。
動物たちの扱いに精通されているプロの方ならば、愛猫に爪切りやしつけができますが
一般的な飼い主さんにはなかなかハードルが高いようです。
そんな愛猫家のためには建材での工夫も必要になります。
1)クロス貼り壁
できるだけ表面が平らでツルっとした傷に強いタイプを選らぶ。
しかし、クロスの場合は傷つけられると全面を張り替えることになるので、麻縄パネルのような爪とぎしやすい部分を用意して、そこで爪とぎを促すように誘導する。
2)塗り壁
傷ついても、その部位を補修するだけで済むので、日曜大工感覚で対応できます。
調湿、匂いを吸収するタイプのものを使うと良いと思います。
3)爪も立たない硬い塗り壁
今回採用したシリカライムという製品は水硬性石灰が主成分なので時間とともに硬度が増して丈夫になっていきますので、愛猫もその部分では爪とぎを諦めるようです。
それでも傷がついた時は簡単に補修も可能です。
トイレの工夫
人・愛犬・愛猫たちが一緒に暮らす
そのためにもいろんな工夫が必要です。
イタズラ好きな愛犬・愛猫たちも食事やトイレは邪魔されずに落ち着いてしたいもの
そのために考えたのが「トイレの立体分離」
クライアントさんからラインで
「初日からおトイレ完璧でした!」との写真付きのメッセージが届きました♪
トイレを済ませて、下に降りてくる愛猫
愛犬はターゲットポールがないとオシッコをしてくれないので、愛犬専用トイレには用意してあります。
ポールは上から吊ることで、下のトイレシートの取り替えを容易にしています。
PROCESS 工事関連(解体工事から竣工・引き渡しまで)
解体工事
土地購入による引渡日を待って、解体工事に着手
既存建築物の図面がないために、目視できる部分での見積金額で解体工事契約を行い
今回は、既存建築物だけではなく、既存擁壁を含めた解体工事を行いました。
1)解体前
コンクリートブロック造でRC造地下室のある既存建築物は、改築で屋根が2重になっていたりと、なかなか解体が思うように進みませんでした。
2)建築物解体完了
解体時の防塵シートを取り払い、既存建築物の地上部分がなくなっていることが確認できます。
これから地下部分と擁壁の解体に着手です。
3)解体工事終了
近隣に騒音や振動でご迷惑をおかけしないように配慮しながらの解体作業、予期せぬ地中埋設物等の撤去もあり、予定よりも工期が遅れてしまいましたが、これから長く住む近隣への配慮を優先したいというクライアントさんの意向もあり、トラブルがないように進めてもらいました。
■建築家からのアドバイス
解体工事契約には通常予期できない地中埋設物撤去費や近隣対策費が含まれておりません。
予算組をする際には想定外費用を少し見込んでおくと宜しいかと思います。
擁壁配筋検査
傾斜地に造成された土地
擁壁により宅盤を支える場合には、信頼できる構造で擁壁を造り上げることが必要です。
擁壁は目に見える部分では「塀」のようにしかみえませんが、その見える部分と同じくらいの大きさの基礎が必要です。
現場をご覧になると、基礎の大きさに驚くほどですが、土圧にくわえ、建築の荷重を支える大切な構築物ですから納得です。
そしてその骨組みとも言える鉄筋が、図面や仕様書どおり施工されているかどうか?を
確認します。
建築士による鉄筋の種類、ピッチ(間隔)、かぶり厚等の検査に合格してはじめて
コンクリート打設へと移行します。
■建築家からのアドバイス
「擁壁」が構造的基準を満たしていない場合や、宅地造成申請が必要な場合での確認申請や検査済証がない場合には、「崖」と見なされます。
その際には、建築物が「崖」に影響を及ぼさないように、杭工事等が必要になります。
建築費増加に繋がるので、土地を購入する場合は確認してください。
擁壁コンクリート打設
配筋検査にパスした後に型枠を完成させ、ようやくコンクリート打設です。
現場に運ばれてきたコンクリートの性能が仕様書とおりになっているかをチェックし
合格した段階で、打設スタートの指示を出します。
スランプ検査
空気量・温度
そして、この型枠で囲まれたスペースにポンプ車を使ってコンクリート流し込みます。
隙間なくコンクリートが隅々まで行き届くように
バイブレーター、木槌、竹等を使ってコンクリートを丁寧に打設します。
■建築家からのアドバイス
コンクリート打設は一発勝負の緊張感が漂います。
職人さんたちはもちろんですが、監理する建築家も緊張するものです。
宅地造成工事完了
鉄筋コンクリート製の擁壁が出来上がった後に埋戻し、転圧により地盤を締め
いよいよ宅地造成工事の完了です。
鉄筋コンクリート製の擁壁はしっかり乾けば、完成時より白くなります。
整地も済み、いよいよ建築着工の準備ができました。
■建築家からのアドバイス
擁壁建設時に掘削し埋戻した部位は地耐力が期待できません。
そのため、地盤改良工事は必須になりますので、建築工事見積り時に想定予算を確保しておきましょう。
地鎮祭(費用・スタイル等)
着工のスタート時に地鎮祭を行うことが多いです。
形式としては神道による地鎮祭が多く
その地域の氏神様を祀った神社にお願いすることが一般的です。
地縁が希薄になってきた最近では、フリーの神主さんにお願いするケースが増えています。
費用は神主さんへ4万円~6万円程度が多いようです。(首都圏)
個人住宅の地鎮祭では、カジュアルな普段着が一般化しています。
天候によっては地盤がぬかるんでいるので、高価な靴は避けたほうがよろしいかと思います。
また、仏式、カトリック式、ロシア正教会式・・・いろいろな地鎮祭がありますが
神道による地鎮祭を各宗教がアレンジして行っているように思います。
また、地域によって風習も異なりますので、事前に問い合わせておくと良いでしょう。
■建築家からのアドバイス
新築の場合は地鎮祭が多いですが、
諸事情がある場合、リフォームの場合には「安全祈願祭」というスタイルもあります。
地縄確認
地鎮祭の後
設計者と一緒に「地縄の確認」を行い
設計どおりの配置になっているかの確認を行います。
大地に張った縄で、位置や大きさが実寸で把握できるのですが
この時が実は最も小さく見える時なのです!
人は空間の大きさを認識する際に
縦と横の比率で考えてしまいます。
例えば、トイレのような小さな空間では、天井が高すぎると
縦と横の比率が細長くなり、狭く感じるようです。
この地縄確認時は縦の高さが「空」になってしまいますので
広い土地であっても、どうしてもイメージしている空間より小さく感じます。
でも、安心してください!
屋根、壁、天井が出来上がってくるとその広さに驚くことでしょう。
■建築家からのアドバイス
工事期間中に色々とご迷惑をおかけする近隣の方には挨拶を行い、工事期間、連絡先等も知らせておきましょう。
今後、長いおつきあいになるので、とても大切だと思います。
地盤調査
建築の土台とも言える地盤を知ることが丈夫で安心できる家づくりには欠かせません。
建設地の地盤状況を調査し、設計に反映させる必要があります。
木造住宅の場合には
SWS試験(スエーデン式サウンディング試験)と言われる地盤の強度を調べる調査が一般的ですが、
今回はより精度の高い調査により無駄のない地盤改良が計画できるように
次世代地盤調査と言われる
SDS試験(スクリュードラーバーサウンディング試験)による土質の調査も行いました。
▼SWS試験(スエーデン式サウンディング試験)の試験結果
▼SDS試験(スクリュードラーバーサウンディング試験)の試験結果
以上のデーターに基づいて地盤調査会社の検討結果が届きました。
▼地盤調査会社の考察
このデータに基づき、設計者の私と構造設計担当者とも検討を行い
当初の予想どおり擁壁工事による盛り土部分の地耐力が期待できないという結果になりましたので、地盤改良方法を検討することになりました。
■建築家からのアドバイス
地盤調査会社は工事における地盤保証を行うことが多いので、調査も精度がアップしてきています。
しかし、時々設計者や構造設計者と地盤改良についての考え方が異なることがあります。
そんな場合には、当事者同士綿密な協議を行い対策方法を決定します。
地盤改良
地盤調査結果に基づき、設計者、構造設計者、地盤改良業者との打ち合わせを行い
構造的な安全性に加え、コストバランスの観点を勘案し
「Σ-i工法」と呼ばれる翼付き鋼管杭を採用することになりました。
この工法による翼付き鋼管杭の効率的な配置の提案に対して
承認を行い、地盤改良工事に着手です。
これらの工事がしっかり行われて初めて安定した宅盤として上に建築される住宅を支え続けます。
■建築家からのアドバイス
地盤改良方法にはいくつか方法がありますので、
複数の工事業者さんから工法提案や見積もりを取得し、
建築家と構造設計者に最終判断を委ねるとよろしいと思います。
根切・土工事
地盤改良工事が終了すると、いよいよ基礎工事に着手です。
基礎の基盤となる根切を行い、基礎の底盤には採石、防湿シート、捨てコンクリートを施工します。
根切工事 ユンボで基礎形状に応じて掘削を行います。
防湿フィルム工事
守護札 地鎮祭の時に頂いた基礎下を守護するお札を納めます。
■建築家からのアドバイス
神道では御札は地中を守護するものと、上棟時に家の高いところを守護する2つがあります。
工事の安全はもちろん、住まい手の生活を守護してくれる大切な存在です。
基礎配筋検査
弊社で手がける木造住宅の基礎は「べた基礎」を採用しています。
「べた基礎」とは基礎の立上りだけでなく、
底板一面が鉄筋コンクリートになっている基礎のことです。
線的な「布基礎」と違い、
立ち上がりだけではなく、底盤一面が鉄筋コンクリートとなっている「べた基礎」は
面的基礎ですので、水平方向に対する剛性が強く、より強固な基礎形式です。
建築基準法では構造計算の不要とされる4号建物においても、弊社では構造設計の専門家に構造設計と現場チェックもお願いしています。
鉄筋の太さ、配筋のピッチ、定着長さ、かぶり厚、スリーブ、止水板等を確認し、合格判定でしたので、いよいよコンクリートの打設に移行します。
基礎の立ち上がり部分が土の中に深く埋まる場合には、コンクリートの打継ぎ部分からの水の浸入を防ぐために「止水板」を設置します。
コンクリートは何度かに分けて打設を繰り返して施工しますので、地中より水の侵入が予想される箇所には、防水処理の一つとして欠かせない処置です。
浸水対策としては、これだけでは十分ではありません。
基礎防水を対象となる部位に施工することで、より安心安全な防水仕様が出来上がります。
基礎コンクリート打設
コンクリート打設前にスランプ、空気量、温度等の検査を行います。
検査に合格すると、まず耐圧盤(水平部分)からコンクリート打設をスタートします。
その後、立ち上がり部分の型枠を組み立てます。
そして立ち上がり部分を打設
基礎工事一つにしても、いろいろと手間が必要で多くの工事関係者によって施工してもらっています。
■建築家からのアドバイス
僕たち建築家は、それらの工事が適正に行われているかの確認や現場での予期せぬ事象に対応することが求められています。
つまりクライアントさんの代理人として専門家である建築家が監理することの意味がそんなところにもあるのです。
基礎型枠撤去
個人的には工事のプロセスの中で好きな工程の一つ
コンクリート打設後に適切な養生期間をおいて、型枠を撤去する瞬間です。
以前、職人さんから
「コンクリート打設は一発勝負! 気合を入れて打設しないとダメだ!」というアドバイスをいただいたことがありますが、
その結果を見る瞬間は、独特の緊張感が漂います。
豆板(じゃんか)もなく、きれいに打ち上がりました。
半地下部分は基礎防水(パラテックス防水)を施し、そして基礎周囲を埋め戻します。
■建築家からのアドバイス
コンクリートが固まるまでの養生期間は木造住宅の基礎の場合
3日から7日程度(夏場は短く、冬場は長く)が一般的です。
キャンティレバー(はね出し)の基礎の場合は、少し長めに確保します。
プレカット図
工期短縮、加工の簡略化、コストダウンという目的で、ほとんどの木造住宅ではこのプレカットが主流になりました。
熟練した大工さんの特殊な技を必要としないこの手法は、
CAD・CAMの進化による技術革新であり、日本の住宅供給に欠かせない技術です。
基礎工事を行っている間に、
プレカット図の作成、質疑、チェックバック、訂正、協議と何度か繰り返し
承認というプロセスを経て、プレカット工場で加工に入ります。
最近では、三次元で架構の様子がわかるようになり、とてもチェックがしやすくなりました。
■建築家からのアドバイス
この架構で骨格が最終決定されます。
この時点でのチェックは、プレカット会社、設計者・構造設計者、工事監督との間で何度もやりとりを行います。とても緊張する作業の一つです。
キッチン設備図
プレカット図に基づいた加工が進む中、一方では主要な設備系の確認が進みます。
キッチン周りは給排水工事、ガス工事、換気設備工事、電気設備工事との取り合いも絡んでくるので、複数の関連業者さんと打ち合わせを行いながら、承認図(平面・断面)や仕様の確認を行い、工事を進めます。
プレカット図に基づいた加工が進む中、一方では主要な設備系の確認が進みます。
キッチン周りは給排水工事、ガス工事、換気設備工事、電気設備工事との取り合いも絡んでくるので、複数の関連業者さんと打ち合わせを行いながら、承認図(平面・断面)や仕様の確認を行い、工事を進めます。
仕事は現場以外でも動いている
舞台を工事現場と例えるならば、
大道具製作や小道具製作が裏方で行われているように
プレカットをはじめ、サッシ、板金、家具等の製作は同じように裏方で進行しています。
そして、そのさらに裏方の作業として、設計者、現場監督、工事担当者との熱い打ち合わせがあるのです。
今回の屋根は少し複雑な形状をしていることもあり、
美しく仕上がりが納まるように、事前に弊社で打ち合わせをします。
三角形の端部の処理等に特に神経を使いながら、板金屋さんならではのノウハウを駆使して、現場監督さんから関連工事との取り合いを模型を見ながら話し合っています。
この話し合いをもとに現場での微調整を確認しながら、仕事は進んでいきます。
特殊金物
従来の木造軸組工法は、柱や梁にホゾという加工を行い接合しているために、木材の欠損部分が大きくなり、耐震力が低下すると言われていました。
こうした弱点を改良する金物工法は木材の削り取り部分を最小限に抑えながらしっかりと軸組みを固定しますので耐震力や施工性が向上するために、現在の木造軸組工法では主流になっています。
この住宅では、屋根勾配が南北方向、東西方向への傾斜を持っているために
3次元での架構が必要となり、標準金物に加え特殊金物を製作し接合するという手法を取っています。
金物取付位置図
金物製作図
構造設計者が設計した金物が製作され、現場に運び込まれてきました。
錆止め塗装を済ませた特殊金物(8種類)
上棟式
家を建てる過程で執り行われる日本の伝統的行事の一つです。
地域によっては、屋根の上から餅をまき周辺の人たちへの挨拶的なことも行われてきましたが、道路に人があふれ交通が遮断されることもあり都市部では見られなくなりました。
最近では、上棟式は執り行わないことが多くなりましたが、
大工達との顔合わせと感謝の気持ちを伝えたいとの建主さんの希望で直会(なおらい)を行いました。
建主さんの粋な計らいで用意された大好評のお弁当(銀座 うち山) ごちそうさまでした。
上棟の時はクレーン車、応援の大工さん達の手際のより連携作業により
みるみるうちにプレカット工場から運ばれた材木が組み立てられていきます。
家づくりの過程で最もエネルギッシュで、建主さんの想いや設計者の意図の骨格が形になるこの瞬間はとても身が引き締まり、そして大好きな瞬間でもあります。
■建築家からのアドバイス
上棟式のルールやご祝儀の相場等
明確にわかりにくいことが多いのが日本の伝統でもあります。
気持ちが伝わればいいのだと思います。地域によって異なりますが、参考サイトです。
上棟式の基礎知識
工事中だけに見える景色
完成してしまうと見ることができない景色
特に木造軸組構造の架構風景は美しいものです。
2階建6層のフロア構成を持つ住宅の特徴的な構成が一望できる瞬間です。
※中庭を囲んで床が卍状にスキップし続ける構成(パノラマ写真)
その構成に呼応する形で架構する屋根は先に紹介した特殊金物が一つ一つ異なるレベルに固定されています。
今回は制振性能向上のために、制振ダンパー(evoltz)を設置し、地震の衝撃を1/2に軽減するように配慮しています。
私と構造設計事務所の検査
そして建築検査機関による中間検査にも合格し、竣工に向けてスパートです。
空間構成と仕上げの確認
屋根、壁、床の架構が完了し、開口部も開いた状態で空間のイメージが把握できるようになります。
ここに下地が取付けられ、仕上げが施されるイメージを感じながら
床、壁、天井等の仕上げを確認していきます。
床材は水平に並べ、壁材は垂直に立てかけ、双方の調和具合を光の当たり具合等を勘案しながら決定していきます。
■建築家からのアドバイス
この段階で、コンセント、スイッチ類の取付位置を設備プロット図に基づいて確認します。
取付位置や個数の調整の最終確認になるので、しっかりとチェックしましょう。
人・愛犬・愛猫のための断熱性能向上
省エネという言葉は一般化され、住宅の断熱性能は向上しています。
特に、愛犬や愛猫は在宅時間が人より長いのが一般的で、飼い主が留守の間もずっと家にいることが多いです。
防犯のことを考えると、留守の間も窓を閉めることになりますし、たとえ防犯上安全な窓を開けておいても、昨今の猛暑にはやはりエアコンが必要です。
そうなると一日中、冷暖房をつけておくことになるので、通常の使用以上に部屋の断熱性を高めることは必須です。
屋根、外壁、床下に断熱材を適材適所に施すことにより、家全体を魔法瓶のようにすることが大切です。
屋根・壁・床下の断熱性能を高めると同時にもっとも熱損失の大きい開口部の断熱性能を高めることが大切です。
熱損失の大きい開口部は樹脂窓・ペアガラス・LOW-Eガラスといった断熱性能の高いサッシを使うと良いでしょう。
今回は樹脂窓・ペアガラス・LOW-Eガラスで世界的にも高い性能を持つYKKapのAPW330という樹脂窓を使っています。
アルミに比べ樹脂は熱が伝わりにくいので、断熱性能が向上するだけではなく、結露も著しく減らすことができるので、建築主様の希望を満たす製品です。
※画像出典:YKKap https://www.ykkap.co.jp/apw/apw330/detail/
コストは少し高めですが、断熱性能が向上するために
エネルギーのロスが軽減され、ランニングコストが下がるので長い目で見るとお得だと思います。
断熱性を高めるプロセスで、サッシも進化し続けています。
アルミ(複層ガラス)
↓
アルミ樹脂複合(複層ガラス)
↓
樹脂スペーサー仕様(ガス入複層ガラス)
近い将来、サッシそのものがディスプレイとして活用できるものなど
サッシのIT化も進んでいるようです。
そんな進化し続ける製品を吟味して取り入れるのも建築家の仕事の一つなので
WEBだけではなく、ショールームでの情報収集も欠かせません。
※新宿ショールーム:一般ユーザー向け
※体感ショールーム:プロユーザー向け
人・愛犬・愛猫のための空調
一般的には、家で過ごす時間が最も長いのは愛犬や愛猫達です。
飼い主が留守の間も、ずっと家で留守番をしていてくれます。
そんな彼らのために、寒い冬や暑い夏は留守中もエアコンをフル稼働させることが必要です。
そうなると気になるのが光熱費
家の断熱性能を向上させることはもちろんですが、エアコンや床暖房そのものも省エネルギーのものが求められます。
今回はヒートポンプ式のエアコンと連動したヒートポンプ式温水床暖房「ホッとく~る」というシステムを使っています。
最近のヒートポンプ式はとても省エネ性能が向上しているので、ランニングコストがかなり少なく済みますので、イニシャルコストが多少高くても、短期間でその差額を回収することができます。
家を長持ちさせるために
高気密高断熱の住宅が今では一般化してきたように思います。
省エネルギーには欠かせないのですが、高気密であるがゆえに、木造住宅の場合は室内で発生した湿気が壁紙を通過して内部にまで入りこみ、そこで結露になってしまうことが多く見られます。
これがいわゆる躯体内結露です。
躯体内部のことですから住まい手はほとんど気がつくことなく、壁内部の断熱材や木材にカビが生えてしまいます。
これは健康上好ましくないだけではなく、構造体の寿命を縮めることにもなるので、この外壁部分での通気を確保することが大切です。
以前は壁の内側に胴縁を取り付けることによって空気の流れを作る工法が一般的でしたが、最近では、防水透湿シートそのものに空気層を確保するための工夫を施したものがあります。
今回採用したBSW工法は従来の胴縁工法と同性能が確保できると同時に、工事の短縮化、コストダウンを実現した優れた工法です。
この黒い防水透湿シートの構造体側に通気層があります。
このドットが通気層を確保するために付けられたものです。
■建築家からのアドバイス
壁の通気は土台の水切りや屋根の端部金物も通気用の製品と組み合わせることにより通気性能を発揮しますので、貼れば良いというものではありません。
屋根は居住空間の原点
居のための原点とも言える屋根
雨や強い日差しを遮断し、安心して居住環境を創出してくれる重要な部位です。
その屋根を覆うガルバリウム鋼板の納まりは、板金屋さんとの綿密な打ち合わせで、端部の処理に特に繊細に対応してもらっています。
特に画像左上部分の垂直面と交差する部分はとてもすっきりと納っています。
この屋根は東西方向にも南北方向にも傾斜している特徴的なデザインなので、その形状を天井にも表現しています。
これに天井のボードを張って、仕上げをすれば完成です。
各種検査
完成間近の住宅
クライアントさんに引渡す前に各種検査を行います。
1)工務店の現場監督さんの検査
2)工務店のチェック部門の検査
3)設計監理者による検査
4)クライアントさんによる検査
5)確認申請審査機関による完了検査
これらの検査をパスして、補修等が必要な場所の直しを行って
初めて、クライアントさんに引渡します。
写真は工務店のチェック部門の検査の様子
仕上げの傷、窓や扉の開閉具合、設備機器の動作具合等を確認します。
また、審査機関による法規的なチェックにより確認申請書どおり施工されているかどうかを検査し、合格して初めて、検査済証を発行してもらいます。