外部空間の演出法(外部空間は内部空間と一緒に考える・景をつくる)

外部空間は内部空間と一緒に考える

 

一般的に住宅の間取りばかりに着目し、外構は後回しにされがちですが、屋外の部屋として考えなければなりません。

したがって、 住宅の間取りと同時に外構も併せて計画することが重要です。
住空間とは、外部と内部の空間的連続性があって、はじめて成立 するものです。

外部空間

●建物や周辺環境との調和
外構は、一般的に建物と周辺環境との接点となる住宅計画上、重要な場所です。せっかく素敵な住宅が建設されても、この外構が良くなければ住環境全体が台無しになるだけでなく、周辺環境との調和が無ければ、やはり優れた住宅とは言えないでしょう。
したがって、住宅および周辺の街並みとの関係性を配慮しながら、広い視点で住環境を計画していかなければなりません。

●材料、樹種の選定
素敵な樹木であっても、その土地の気候風土に合ったものでなければ、すぐ枯れてしまいます。素敵な岩を見つけても、自分の敷地に搬入できるか、また庭の規模に合うかどうか検討しなければ庭に配置することができません。
すなわち、外構計画では日照、通風、樹種、材料、植栽を施す時期等の自然との関係を配慮しながら総合的に考えていくことが重要です。

●維持管理
庭は生きていますので、植物は絶えず成長し、四季の変化という楽しみを私達に提供してくれます。そのため、庭の維持管理こそが最も重要な庭づくりであるといっても過言ではありません。
植物の管理はもちろんですが、忘れがちなのが水の処理です。散水、雨水の処理をしっかり計画しておかないと、不要な水溜りができたり、散水が容易にできない等の問題が発生します。
やはり、自然の摂理を配慮して、維持管理に不必要な手間がかからない様に配慮してください。
※手洗いの水処理を活かした水琴窟という日本独特の文化は、この水処理の最高傑作です。

 

 

 

多様な性格をもった外部空間は生活空間を結ぶ

 

庭の種類は多様で、屋外、半屋外と空間も多様名表情を見せる。
外部と内部が明確に分離された西洋と庭と異なり、
日本の場合は屋外と屋内との境界を曖昧にした中間領域といった空間を介して屋内外が一体化する。
さらには「借景」という優れた概念があり、遠方の景色までをも連続させてしまう宇宙観は世界に誇るべき概念である。

外部空間と内部空間の連続性

●主庭
主として、鑑賞を目的とした庭であったり、居間や食事室の延長であったり、心の充足感を高める外部空間です。 敷地に余裕がある場合は、前者と後者が別々に計画する場合がありますが、一般的には、日本の土地事情もあって後者が圧倒 的に多いようです。
最近では、ガーデニングブームの影響で、この場所にウッドデッキテラスを設けて、だんらんの場として庭を活用することが 多く、外部の居間といった性格が顕著です。

●前庭
門から玄関までのアプローチであり、街並みに対する住環境の表情を決定付ける空間です。
この空間に限っては、動線が長い ほうが空間に奥行きが生まれ、住空間全体が豊かになります。
また、ガレージをこの場所に設けるケースが多いので、日照、通風はもちろん、全体的な雰囲気を配慮して計画を行うことが重要です。

●中庭・坪庭
都市化が進む中で、周辺の建物の密度が高くプライバシーの確保が困難な場合等に活用させる空間です。 都市住宅の中のオアシスであり、心の充足感を提供することはもちろんですが、採光、通風上においても、非常に役に立つ空間です。
最近では、浴室の傍に設けて屋外空間として楽しむケースが、良く見られます。

●裏庭(サービスヤード)
台所、ユーティリティーと通用門との連絡部に設けられた家事空間のひとつです。
屋根をかけるケースが多く、半屋外的な場所として利用されます。
物干、ゴミ置場、自転車置場、漬物置場、食材置場等利用形態 は様々ですが、敷地に余裕があれば、是非とも欲しい空間です。

●通り庭
京の町家等に見られる特徴的な屋内庭で、土間であり、中庭から裏庭を結ぶ通路であり、サービスヤードであったり、台所であったりという多様な生活空間であると同時に、空間そのものが空調装置としても機能している。

中間領域 縁側

 

 

 

 

景を創くる

 

外部空間はそのものが景色となるようにつくられます。
枯山水

 

庭の構成

●アプローチ
門から玄関に至るまでの屋外または半屋外の空間であり、地域と個人との接点となる重要な空間でもあります。 この空間の演出の良し悪しで、家全体の雰囲気を決定付けるといっても過言ではありません。

(和)
自然を手本に構成された日本的住環境においては、アプローチ空間の動線的が長く、折れ曲がっている方が、移動時の視線の変化が楽しめ、空間的な奥行きを演出できるので好ましいとされます。

(洋)
自然の素材を人工的に構成した西洋的な住環境においては、門から玄関が軸線上に配置され、遠近感を演出したほうが、好ましいとされます。

●築山、植栽
風景を創り出す基本となる技法で、庭造りのイメージを決定付ける骨格をなす部分です。
周囲環境や遠方の景色はもちろん、太陽光線や樹木や石の表情とも対話しながら計画を進めていくことが重要です。

●添景物
築山や植栽を施された庭に人口構築物を程よく配置し、修景を施す手法として用いられます。
移動空間における視線を奥へと誘導したり、空間にアクセントや潤いをを与える重要な要素です。
和風庭園では、石灯篭、腰掛、水鉢が多く、洋風庭園では照明灯やフォリ-(東屋)等が用いられます。

 

自然と融合しつつも大胆な構成も日本人の感性がなせる技なのでしょう。

 

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著者情報

前田 敦 / atsushi-maeda

前田 敦 / atsushi-maeda

犬と猫と快適に暮らせる社会の実現を目指して、ペット共生住宅に特化した設計活動を行っている建築家
設計作品の中でも特に注目すべきは、ペットがストレスなく自由に走り回れることを重視して設計した「スロープの家」シリーズです。これまでの住宅設計にはない新しい発想から生まれたもので、独創的なコンセプトと緻密な設計が注目を浴び、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞といったさまざまなメディアで紹介されています。

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