こだわりを楽しむ(家づくりには欠かせない大切なこと)眺望、採光、生活、想い出

家づくりを建築家に依頼してくる方は、住まいへの「こだわり」を持っていらっしゃいます。

建築家の仕事はその「こだわり」を形にしていくことでもあります・

家は建築家と創るもの

手がけてきた建築は施設が中心なので、自分の家は建築家と創りたい!
自らも一級建築士のクライアントさんのこだわりでした。

土地を購入される際にも、自らプランニングを行い検証する
時には模型までつくってしまう

そんなクライアントさんとの出会いは設計コンペでした。

「自分の作った案を超えた提案が気に入りました」とのことで最優秀案に選ばれ設計依頼

相手もプロ だけどそれ以上の提案が求められる難しさもありましたが、とても楽しく仕事ができました。

三段の敷地にバリアフリーの空間
既存の鉄筋コンクリート造駐車場をくり抜きエレベーターの設置
既存の登りにくい階段に併せ階段状の市道からの動線の確保等
ガラスの家

ガラスの家

隣接する緑地帯と階段状の市道という特殊条件で西日や通行者の視線が遮られるので
眺望を重視したガラス張りのLDKも実現しました。ガラスの家

そんなクライアントさんに対して、当時の設計パートナーの木許氏もノリノリで
短期間で、CGや空間のシークエンスが説明しやすい動画を制作してくださいました。

ガラスの家

「動線をデザインする」という私の趣旨を明確に表現する様はとても頼もしくありました。

これを観たクライアントさんの感動された表情は今でも忘れません♪

Movie#1
https://www.youtube.com/watch?v=XsPCakmyJws
Movie#2
https://www.youtube.com/watch?v=YshQ9PAtU9I
Movie#3
https://www.youtube.com/watch?v=XqDJwGtm0MI
Movie#4
https://www.youtube.com/watch?v=ProyNbFqP6M
Movie#5
https://www.youtube.com/watch?v=fDAV1vyr7Go
Movie#6
https://www.youtube.com/watch?v=-1Qg_Qm9C8s
Movie#7
https://www.youtube.com/watch?v=JyfeXXIvdkU
※動画制作:木許裕康氏

 

こんな未完の空間に、手作りの家具が徐々に加えられて行く様はとても楽しく。
完成後5年のときにTV撮影も行いました。

ガラスの家

ガラスの家

擁壁を建築と一体化する

 

薪ストーブとイームズのラウンジチェア

薪ストーブのある別荘ライフ

木立に抱かれた半屋外の空間でアウトドアライフを楽しんで欲しい!

そんな想いで提案した「木漏れ日屋根の家」

木漏れ日屋根の家

建築家の思いに呼応して、クライアントさんからの言葉は

「薪ストーブのある素敵な空間のイメージを損なうことのない薪置場をデザインして欲しい。
そして、それを自分で造ってみたい。」

さすがに基礎だけは工事業者さんにお願いして造ってもらいましたが、
クライアントさん手作りの薪置場の完成です。

薪ストーブと薪置場

家づくりのプロセスを自ら汗を流し楽しんでいただきました♪

 

 

「イームズの椅子が大好きなので、それを上手くコーディネートして欲しい!」

最初の打合せの際に、
30枚を超えるイメージ写真や要望をまとめた資料を用意してくださっていました。

その中にはチャールズ・イームズという建築家/家具デザイナーの椅子の写真が含まれていて
僕の感性に近いものを感じて、イメージが湧き上がってきました。

木の椅子よりも濃く、そして荒いイメージの無垢のフローリング
白い壁・天井の中に表現された構造体(柱、梁、垂木)
そんな空間が相応しいように思い、デザインをした空間

薪ストーブのあるイームズが似合う家

ちょっとシックなリゾート空間の演出です。

 

クライアントさんのこだわり&建築家のこだわり

それぞれがセッションすることで作品が出来上がります。

都内なのに、別荘地のような雑木林
こんな環境に一足踏み入れた際に、木漏れ日が心地よかった・・・

建築家のこだわりは、
こんな木漏れ日の下に佇むことのできる生活をカタチにすること

木漏れ日屋根の家

そのためには、木漏れ日注ぐ樹木そのものを屋根にすること
だだそれだけ

木漏れ日屋根の家

木漏れ日屋根の家

木漏れ日屋根の家

 

シラス壁に光を這わせる

「シラス壁を使って欲しい!」

その建材に強いこだわりをもたれるクライアントさんからのリクエスト

ただシラス壁を使うだけでは誰でもできる。
建築家としてそのこだわりに応えるにはどうするべきか?というところから設計をはじめました。

調湿効果や匂いを吸収する効果が期待されて一般的に使用されるケースがほとんどですが、
そのシラス壁をもっとも美しく活かしてあげるにはこれっ!

「光を這わせる」

敷地は旗竿敷地と呼ばれる都市部特有の変形土地で
周囲が建物で囲まれていたために、スカイライト(天窓)からの光をシラス壁に這わせて
独特な表情を魅せるように演出しました。

光を効果的に魅せるには、影の存在も欠かせません

天空からの光を楽しむ家

天空からの光を楽しむ家

※シラス(wikipedia)

 

桜並木を望む家

「河川沿いの桜並木が気に入って土地を購入しました。」

桜並木を望む家

クライアントさんと最初にお目にかかる際に、必ずお尋ねすることがあります。
それは建築家としての僕のこだわり

新規土地購入の場合には
「この土地を何故選んで購入されたのですか?」

建替えの場合には
「この土地にどんな想い出がありますか?」

その回答はとても重要で、
プランニングのイメージを決定づける大切な想いを見つけ出すことができます。

この家は、浴室も含めた全ての部屋から河川沿いの桜並木を望めるように開放的にし、
一方、北側は高層マンションからの視線に配慮して閉鎖的な構成にしています。

■開放的な外観(全てバルコニー、テラスを経由して桜並木を望めます。)

桜並木を望む家

■閉鎖的な外観(高層マンションからの視線を遮る)
桜並木を望む家

そうすることで、閉じられた空間を経由して中に入れば、より一層開放感を感じることが可能です。
空間の移動にはメリハリが欠かせません

桜並木を望む家

 

想い出の樹を包み込む家

物心ついた頃からそこに在る樹木

特に意識してたわけではないのですが、新築時にも何となく伐るのは忍びない・・・

想い出の樹を包み込む家

ならば、その樹木を生活空間に包み込むような家にしようと設計した住宅です。

「こだわり」とはとても強く意識しているものだけではなく
なんとなく意識しているものにも抱く感情のように思います。

そんな「こだわり」に気付くことが重要ですから、
何でもないと思われがちな雑談をとても大切にしています。

 

 

今住んでる家が暗くて子供達が怖がるんです・・・

ご両親の住む住居の北側に土地を分けてもらって新築するのですが、
明るさがとても気になるのです。

「気になる」というのも「こだわり」の一つと言えるものだと思います。

北側の一間廊下(遊び場)を明るく照らし、吹抜けを通して1階のLDKを明るくする
連続するスカイライトにより家全体に優しい光を注ぐようにしました。

北向きの家は柔らかい光と景色が楽しめる落ち着いた空間にできる魅力もあるのです。

天窓 吹抜け セカンドリビング

 

 

金魚の飼い方も提案して欲しい

ペットと暮らす家を手がけていますが、愛犬や愛猫がほとんどで
金魚にこだわりを持っていらっしゃるケースは初めて・・・

高級な金魚を美しく育てて鑑賞するという趣味ではなく、
室内の演出として飼いたいとのこと

クライアントさん、共同設計者と一緒にアイデアを絞り込む

景としての金魚は、池に居る錦鯉と同様上から観るのが最も美しい!

ならば、床を水槽にして、それを照明として利用することに・・・

金魚の泳ぐ床の誕生です♪

金魚の泳ぐ照明床

真ん中の穴は、餌をあげるときやメンテナンスでガラスの床を開ける際に使用します。
見えないところにエアーも配置し、快適に金魚も泳いでいます。

※共同設計者:岡村宅途

スキップフロアの家/白金台

 

 

窓は景色を切り取る

優れた景色を楽しむにはその方向に大開口を確保するとよいが、
観たくない環境に関しては塞ぐことで、内部に景を創る方法も有ります。

この家では2階のリビングから見た景色はアパートの屋外階段や屋外廊下だったので
ハイサイドライトから光源を確保して、大半を閉じてしまいました。

善福寺川の家

手前の白いタイル部分はインナーテラスを名づけられた観葉植物を配置することで
内部に景を創り出すことにしました。

そしてリビングの上階からは、周辺の緑道公園のスカイラインを楽しむことにこだわりをもちました。

善福寺川の家

 

善福寺川の家

 

 

南面であっても大胆に塞ぐ

広い通学路、マンションの外部階段や外部廊下が目の前になるので、南側であっても落ち着かない環境

南側に開口部を取る目的は、採光の為です。

光を確保することができれば、南側でも大胆に塞ぐことも選択肢の一つです。

逆遠近法の家

敷地の北側のご両親の家との間に立派な緑地があるので、この家は東と北に開いた構成としています。

逆遠近法の家

 

今までお住まいだった大きな家(実家)の隣に新築することになり、実際の面積以上に広く感じられるように逆遠近法を用いて、家を貫くように貫入した斜め木壁によりその演出を試みました。

 

玄関から奥に行くに従って平面的な広がりを持たせ、
その奥からリビングを振り返ると大きな吹抜けにより立体的な広がりを演出してみました。
逆遠近法の家

さらに水平方向だけではなく、垂直方向にも広がりを持たせた空間構成にしています。逆遠近法の家

逆遠近法の家

 

採光はいろんな工夫をすれば確保できる

こだわりは持っているんだけど不安・・・

「庭と連続するリビングにしたいので1階にLDKを配置にこだわっているのですが、
周囲が囲まれている環境なので明るさに不安があるんです。」

うなぎのねどこのように細長い敷地は3方を住宅で囲まれていて、北側だけが道路に面していました。

 

光は中庭、吹抜、天窓、ハイサイドライト等から射込むので大丈夫ですよ!
模型で説明するのだけれど、
この不安を払拭するには実物を参考にしてもらうのが一番!!!
他の事例を見ていただいて納得していただけました。

うなぎのねどこ

部屋全体が明る過ぎるとくつろげないので、
メリハリをつけて天空から注ぐ光を楽しむことになりました♪

 

また、カナダでの生活がながかったもので・・・

風致地区内に建てる家ですが、
限られた敷地を最大限活かすために隣地境界線からの離隔距離の緩和を使っています。
その条件として緑化を行うことになり、
道路に面する駐車場のスリッド状の植栽(タマリュウ)とシンボルツリーを植えることになりました。

シンボルツリーの樹種選定の際に、日本とカナダでの生活をイメージして
「楓」と「メイプル」を選びたい!との建て主さんからのリクエストをいただきました。

うなぎのねどこ

うなぎのねどこ

 

 

生活を家族で楽しみたい!

雑誌で観るような綺麗な空間よりも
生活そのものが輝ける家をイメージする・・・

散らかっているものもカラフルで楽しげ

少し冒険もあっていい

遊び心をカタチにした家

昔の消防署のように棒を滑り降りたい・・・
この案だけは、安全上の理由から奥様の反対で却下されました(^_^;A

遊び心をカタチにした家

遊び心をカタチにした家

 

 

著者情報

前田 敦 / atsushi-maeda

前田 敦 / atsushi-maeda

犬と猫と快適に暮らせる社会の実現を目指して、ペット共生住宅に特化した設計活動を行っている建築家
設計作品の中でも特に注目すべきは、ペットがストレスなく自由に走り回れることを重視して設計した「スロープの家」シリーズです。これまでの住宅設計にはない新しい発想から生まれたもので、独創的なコンセプトと緻密な設計が注目を浴び、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞といったさまざまなメディアで紹介されています。

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前田 敦の専門性について

執筆・監修・報道・取材