設計者という建築主代理人の立場からみた建築工事の仕組み

『家を建てよう!』と思ったとき、それが家づくりのスタート! つまりファーストステップです。

でも どこから着手すれば???

ここで【家づくりの手法】を選択することになるのですが、ここが悩みの種!
でも、とても重要なプロセスです。

 

大工さん・工務店・ハウスメーカー・設計事務所と選択肢は多彩です。
人生において最大の買物ともいえる【我が家】ですから慎重に考慮すべきですが、
まず本・雑誌・ネットで情報収集したり、住宅展示場に行ってみたり、友人に聞いてみたり、
知っている工務店に話を聞いたりするのですが、それぞれの立場で自己アピールをするので自分たちにとって最善の選択肢はなんだろう?と言う疑問を持たれている方が多いようです。

そこで、家づくりの中核ともいえる「建築工事の仕組」について「設計者という建築主代理人の立場」から解説していきます。

【ハウスメーカー】

日本で最も多く利用されている家づくりの手法はハウスメーカーによるものです。
住宅展示場に行けば無料で複数の情報を得ることができますし、プランから見積までを短期間で提案してくれますので、標準的な敷地で、資金も潤沢で、短時間で標準的な家を短時間で建てたい!という方には最適の方法だと思います。

徹底的に工業化された製品を組み立てる方式なので、全国どこで建てても同程度の家づくりが確保されます。

設計者という建築主代理人の立場からみた建築工事の仕組み

設計者が工事会社から雇用されていたり、設計委託を受けていると、本来行うべき監理業務が正当に行われないということです。

つまり、本来建て主の代理人であるはずの設計者が、ハウスメーカーに雇用されていると立場になりますと、当然、建築工事コストに対しての発言もできないでしょうし、工事についても是正を求めたりもできなくなります。

工業化されているから、設計者は確認申請だけとおしてくれればいいというスタンスなので、建築家に頼むより設計料がかからないと言われる所以です。

しかし、住宅展示場、TVコマーシャルの費用、本社経費、営業マンの経費、設計費等が工事費の30%~40%必要となり、それらの経費が引かれた金額で地元の下請け工務店が工事を担当するので、建て主からみると最もコストパフォーマンスの悪い家になります。

 

【工務店】

家づくりで2番目に多く選択されているのが工務店です。
伝統的に大工さんに建ててもらうスタイルがある我が国では、設計施工という手法が自然に受け入れられてきたように思います。

実家を建ててくれた、近所付き合いがある、隣の家を建てるときの対応が良かったなど、地域との繋がりが最も強い安心感が工務店にはあります。

工務店にもいろいろ種類があり、独自のやり方に拘っているところ、ハウスメーカーの下請けをしているところ、建築家と手を組んだところ等多様化してきました。

設計者という建築主代理人の立場からみた建築工事の仕組み

ハウスメーカーのときと同様、本来建て主の代理人であるはずの設計者が、工務店に雇用されていると立場になりますと、当然、建築工事コストに対しての発言もできないでしょうし、工事についても是正を求めたりもできなくなります。

最近では、設計者の設計力を取り入れて、設計と監理業務を独立させたケースも増えてきましたが、コストについては発言力がないと言ってよろしいかと思います。

工務店の社長さんに全て任せている! あそこの大工さんの腕に惚れ込んでいる!と言った方にはお薦めです。

【建築家】

家を建てる諸条件は人それぞれ
敷地だって違うし、家族構成やライフスタイルだって違う
住宅については標準というモノがないというのが私の所見です。
つまり、他人の家と違っていてこそ自分たちの家なのだと・・・

設計者という建築主代理人の立場からみた建築工事の仕組み

設計者が建て主と直接契約し、建築知識をもった代理人として工事業者をコントロールするという理想型です。
※破線丸の工務店B or Cは相見積による競争に参加した工務店を示す

まず 建築家に委託すると設計監理料が高いという誤解を取り除きましょう!

ハウスメーカーも工務店も設計者を雇用または外注しているので、設計料はかかっているのです。
それを見積書に計上しているところもありますが、概ねは諸経費の中に含んでいるので分かりにくくなっています。

建築家に委託した場合の設計監理料は、概ね個人住宅で「10%~15%」程度です。
しかし、複数の工務店からの相見積による競争、工事契約の際に見積金額の調整およびネゴシエーションをしていますので、家づくりに関わる費用比率でみると、ハウスメーカや工務店の諸経費よりも、建築家の設計監理料がお得なのかが分かるはずです。

そしてその専門知識をもった代理人が、建築主の立場に立ってサポートしてくれるといったところが大きなメリットだと思います。

私の経験上、コストパフォーマンスが最も良い選択肢だと思います。
自分が建築家だから贔屓していると言われるかもしれませんが、
もし違う職業をを選んでいても業界の実体を知っているので、何の迷いも無く「建築家」を選択します。

たいせつなことは、
建築家(設計者)とは直接契約し、建築主の代理人【監理者】として建築工事に関わることだと言えます!
設計者が工事業者に雇用されていたり業務委託されていたりすると、建て主さんの本当の代理人にはなり得ないのです。

 

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※参考までに
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建築家に設計を依頼するデメリット(建築家紹介センターHP)

著者情報

前田 敦 / atsushi-maeda

前田 敦 / atsushi-maeda

犬と猫と快適に暮らせる社会の実現を目指して、ペット共生住宅に特化した設計活動を行っている建築家
設計作品の中でも特に注目すべきは、ペットがストレスなく自由に走り回れることを重視して設計した「スロープの家」シリーズです。これまでの住宅設計にはない新しい発想から生まれたもので、独創的なコンセプトと緻密な設計が注目を浴び、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞といったさまざまなメディアで紹介されています。

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