家づくりの基礎知識(兼用住宅と併用住宅)
はじめに
兼用住宅と併用住宅の概要
近年、働き方やライフスタイルの多様化に伴い、住宅の形態も変化しています。その中で注目されているのが、「兼用住宅」と「併用住宅」です。
兼用住宅とは、住居と仕事場を一つの建物内に設けた住宅のことで、家族や個人事業主が住みながら働くためのスペースを確保しています。
一方、併用住宅は、住居と仕事場を完全に区画した別の空間で構成し、敷地内に配置することで住みながら働くことができる住宅形態です。
簡単に言えば、
内部で住宅と行き来できる構成のものが兼用住宅
内部で住宅と行き来できない構成のものが併用住宅
この記事の目的と対象読者
本記事では、兼用住宅と併用住宅の特徴や選び方、デザインとプランニングのポイントを初心者向けにわかりやすく解説していきます。
対象読者は、これから自宅を建てる予定の方や、自宅で仕事をしたいと考えている方、あるいは住宅のリフォームや賃貸を検討している方など、住宅に関心がある幅広い層を対象としています。
専門的な知識や用語をできるだけシンプルに説明し、兼用住宅と併用住宅の選択に役立てていただけるように心掛けます。
この記事を読むことで、あなたのニーズに適した住宅形態を選ぶ際の参考になることを目指しています。
どちらの住宅形態が自分に適しているのか、またその選択によってどのようなメリット・デメリットがあるのかを理解し、最適な住まいを見つけるお手伝いができれば幸いです。
建築基準法での考え方
建築基準法施行令では兼用住宅を以下のように明確に規定しています。
建築基準法施行令第130条の3 第一種低層住居専用地域内に建築することができる兼用住宅
法別表第2(い)項第二号(法第87条第2項又は第3項において法第48条第1項の規定を準用する場合を含む。)の規定により政令で定める住宅は、延べ面積の1/2以上を居住の用に供し、かつ、次の各号の一に掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が50m2を超えるものを除く。)とする。
一 事務所(汚物運搬用自動車、危険物運搬用自動車その他これらに類する自動車で国土交通大臣の指定するもののための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く。)
二 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店
三 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗
四 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店その他これらに類するサービス業を営む店舗(原動機を使用する場合にあっては、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る。)
五 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む。第130条の5の2第四号及び第130条の6において同じ。)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの(原動機を使用する場合にあっては、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る。)
六 学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設
七 美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ又は工房(原動機を使用する場合にあっては、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る。
参考:建築基準法第130条の3 第一種低層住居専用地域内に建築することができる兼用住宅
つまり、兼用住宅であれば、
延べ面積の1/2以上を住居として、事務所や店舗などの兼用部分の床面積を50㎡以下という条件を満たせば、
第一種低層住居専用地域内に建築することができるということです。
兼用住宅とは
兼用住宅の定義
兼用住宅とは、住居と事業スペースを一つの建物内に設けた住宅のことで、家族や個人事業主が住みながら働くためのスペースを確保しています。
これにより、通勤時間を削減し、柔軟な働き方が可能となります。
兼用住宅の特徴
住居と事業スペースの一体化
兼用住宅では、住居と事業スペースが一つの建物内にまとめられています。これにより、住みながら仕事をすることが容易になり、通勤時間を削減できます。また、家族との時間も増え、ワークライフバランスを向上させることができるでしょう。
空間効率の向上
兼用住宅では、住居と事業スペースが一つの建物内にあるため、空間効率が向上します。例えば、事業スペースとして使われている部屋は、夜間や休日には家族のリビングスペースとして活用することができます。
住宅ローンについて
兼用住宅の場合、ローンの金利が低く抑えられることがあります。これは、事業スペースの一部を住居として利用するため、住宅ローンの対象となることが多いからです。住宅ローンの対象にならないと判断された場合には、別の方法でローンを組むことにににあります。金融機関の解釈によってそのプランが住宅ローンの対象になるのかどうか?別の方法でのローンについても事前に打合せをして確認し合うことをお勧めします。
また、税制上の優遇措置が受けられる場合もあります。この件についても同様に事前に打合せをして確認し合うことをお勧めします。
兼用住宅のデザインとプランニング
ゾーニング
兼用住宅を計画する際には、住居と事業スペースのゾーニングが重要です。
例えば、静かな空間が必要な寝室やリビングは、事業スペースから離れた場所に配置することが望ましいです。
また、事業スペースにおいては、来客対応ができるエントランスや駐車場の確保も考慮する必要があります。
隔音・防音対策
住居と事業スペースが近接しているため、隔音・防音対策が重要です。
例えば、壁や床に適切な断熱材・吸音材を使用することで、音漏れを最小限に抑えることができます。
また、ドアや窓にも防音性の高いものを選択し、事業スペースでの音が住居エリアに影響を与えないように配慮しましょう。
セキュリティ
兼用住宅では、住居と事業スペースが同じ建物内にあるため、セキュリティ対策が重要です。
例えば、事業スペースへの出入りを制限するために、カードキーや暗証番号によるアクセス制御を導入することが考えられます。
また、防犯カメラや警報システムの設置も、万が一の事態に備える上で役立ちます。
住居と事業スペースの間には、適切な鍵が付いたドアを設置し、プライバシーの確保とセキュリティ向上に努めましょう。
以上のように、兼用住宅は住居と事業スペースの一体化を実現し、空間効率や住宅ローンの利点を享受できる住宅形態です。
デザインとプランニングでは、ゾーニング、隔音・防音対策、セキュリティを重視して取り組むことで、快適で機能的な兼用住宅が実現できます。
自分に合った働き方やライフスタイルを実現するために、兼用住宅を検討してみてはいかがでしょうか。
併用住宅とは
併用住宅の定義
併用住宅とは、住居と仕事場を完全に区画した別の空間で構成し、敷地内に配置することで住みながら働くことができる住宅形態です。
これにより、住居と事業スペースが明確に分けられ、より独立した環境で仕事ができるようになります。
併用住宅の特徴
住居と事業スペースの別々の建物
併用住宅では、住居と事業スペースが完全に区画した別の空間になっているため、仕事とプライベートをしっかりと区切ることができます。これにより、仕事に集中できる環境を確保できると同時に、家族の生活も邪魔されずに過ごせます。
個別の入り口や駐車場の確保
併用住宅では、住居と事業スペースが別々の建物であるため、それぞれに独立した入り口や駐車場を設けることができます。これにより、お客様の利便性が向上し、プライバシーも保たれます。
賃貸収入の機会
併用住宅では、事業スペースを賃貸物件として提供することで、賃貸収入を得ることができる場合があります。これにより、収入源を増やし、経済的な安定を図ることが可能です。
併用住宅のデザインとプランニング
敷地面積の有効活用
併用住宅のプランニングでは、敷地面積を有効活用することが重要です。
例えば、敷地の形状や地勢に応じて、住居と事業スペースの配置や建物の形状を工夫することで、スペースを最大限に活用できます。
建物間のバリアフリー設計
住居と事業スペースが別の建物になっているため、建物間の移動をスムーズに行えるよう、バリアフリー設計が求められます。
例えば、屋外の通路には屋根を設け、雨天時でも快適に移動できるようにすることや、スロープや手すりを設置して、高齢者や車椅子利用者にも配慮した設計にすることが重要です。
建物の耐震性・省エネルギー対策
併用住宅のデザインとプランニングでは、建物の耐震性や省エネルギー対策も重要な要素です。
耐震性に関しては、地盤調査や適切な基礎工事を行い、強固な構造を確保することが求められます。
また、省エネルギー対策としては、断熱性能の高い窓や壁材を使用したり、太陽光発電システムやエネルギー管理システムを導入することで、エネルギー消費を抑えることができます。
以上のように、併用住宅は住居と事業スペースを完全に区画した別の空間で構成し、仕事とプライベートの区別がつけやすい住宅形態です。
デザインとプランニングでは、敷地面積の有効活用、建物間のバリアフリー設計、耐震性・省エネルギー対策に取り組むことで、快適で機能的な併用住宅が実現できます。
住みながら働くことを検討している方には、併用住宅が適した選択肢となるでしょう。
兼用住宅と併用住宅の選び方
用途やライフスタイルの違い
兼用住宅と併用住宅を選ぶ際には、自分の用途やライフスタイルに合ったものを選ぶことが重要です。
兼用住宅は、住居と事業スペースが一体化されており、空間効率が良いため、敷地面積が限られている場合や、家族との距離を保ちながら働きたい場合に適しています。
一方、併用住宅は、住居と仕事場を完全に区画した別の空間で構成した建物であるため、仕事とプライベートをしっかりと区切りたい場合や、賃貸収入を得たい場合に適しています。
資金計画の考慮
兼用住宅と併用住宅を選ぶ際には、資金計画も考慮する必要があります。
兼用住宅は、一つの建物で住居と事業スペースを兼ねているため、建設費が低く抑えられる場合があります。
また、住宅ローンの利点を享受できることも多いです。
一方、併用住宅は、住居と事業スペースが別々の建物であるため、建設費が高くなることがありますが、賃貸収入を得られることで経済的な負担を軽減できる場合があります。
建築規制や法規制のチェック
兼用住宅と併用住宅を選ぶ際には、建築規制や法規制をチェックすることが重要です。
例えば、用途地域や容積率、建ぺい率などの建築基準を確認し、計画が適切な範囲内に収まるかどうかを検討しましょう。
また、事業スペースの用途によっては、特定の法規制が適用されることがあるため、事前に調査しておくことが必要です。建てやすさという点では兼用住宅になります。
地域や立地条件の選択
兼用住宅と併用住宅を選ぶ際には、地域や立地条件も重要な要素です。
事業スペースによっては、アクセスの良好な立地や周辺環境が重要になることがあります。
例えば、お客様が多く訪れる事業であれば、交通アクセスの良い場所や駐車場の確保が求められるでしょう。
また、住宅地に隣接している場合、近隣住民とのトラブルを避けるために、騒音や振動などの対策が必要となります。
さらに、地域の特性を考慮して住宅を選ぶことも重要です。例えば、地域の風土や文化に合わせたデザインや建築材料を選ぶことで、周囲と調和した住宅が実現できます。
また、自然災害が発生しやすい地域では、耐震性や耐水性を重視した建築設計が求められるでしょう。
まとめとして、兼用住宅と併用住宅を選ぶ際には、用途やライフスタイルの違い、資金計画、建築規制や法規制、地域や立地条件を考慮することが重要です。
これらの要素を総合的に検討し、自分に合った住宅を選ぶことで、快適で効率的な住みながら働く環境を実現できるでしょう。
まとめ
兼用住宅と併用住宅の選択基準の再確認
兼用住宅と併用住宅を選ぶ際には、用途やライフスタイルの違い、資金計画、建築規制や法規制、地域や立地条件を考慮することが重要です。
兼用住宅は、空間効率が良く、家族との距離を保ちながら働くことができる住宅形態であり、併用住宅は、仕事とプライベートの区別がつけやすく、賃貸収入も得られる住宅形態です。
自分に合った住宅を選ぶことで、快適で効率的な住みながら働く環境を実現できます。
今後の住宅動向について
今後の住宅動向では、テレワークや副業が一般化することで、住みながら働く環境を求める人が増えるでしょう。
また、高齢化社会や多様な働き方のニーズに応じて、兼用住宅や併用住宅の需要も増加すると予想されます。
環境に配慮した省エネルギー対策やバリアフリー設計、耐震性能の向上など、住宅の機能性や快適性が求められることも今後の住宅動向として注目されます。
最後に
兼用住宅と併用住宅は、それぞれ異なる特徴とメリットを持っており、自分の用途やライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。
これから住宅を建てる予定の方や、住みながら働く環境を検討している方は、本記事で紹介したポイントを参考に、理想的な住宅選びに取り組んでみてください。
最適な住宅を選ぶことで、快適で充実した生活を送ることができるでしょう。
参考事例
事例:都心に立てる賃貸併用住宅