家が建つまで(設計者との出会いから、竣工引渡しまで)

設計者との出会い

『家を建てよう!』と思ったとき、それが家づくりのスタートです。
※設計事務所への依頼を前提に一般的な流れを解説します。

●設計者との出逢い

建築設計事務所は敷居が高い!と良く言われますが、それは昔の話ですね。
どちらかというと、建築が好きで、自分の設計した家が実際に建つことに喜びを感じている人達が多いように感じます。反面、コマーシャルが下手なので、家を建てたい!をお考えの方に自分たちの存在をアピールしていないのが現状です。

一般的には「知人の紹介」や「ホームページやメールマガジンを見て」という場合が多いようですが、実際に会い対話してみて双方納得の上で決めるのが良いと思います。
そこで活用したいのが「展覧会」や「無料相談会」です。

[人柄]・[家づくりの考え方]・[相性]等を勘案しながら、家づくりのパートナーとお見合いをすると考えるとよいでしょう。

実際に、私も雑誌、ホームページ、ブログ、facebookで私の存在、建築感、作品を知ったので会いにきましたというケースが多いです。

建築展で設計者と出会う

建築展

 

調査・企画

相性の合いそうな建築家に出逢った♪ 作品集からもセンスの良さも納得♪

「でも私の家の場合はどうなんだろう?」
「はじめてあった人だからよくわからない?」という不安があることでしょう。

高額な家に関わることなので慎重になって当然です。

そんなときは、まず「調査・企画業務」だけを委託する方法がお薦めです。

自分の家に関わる地理、地形、環境、法規制等の諸条件を整理してもらい、その中で簡単な図面や模型を使ったファーストプレゼンテーションまでを委託するというものです。

 

建築物の用途・規模、設計事務所によって費用は様々ですが、一般的な木造一戸建て住宅の場合は3万円~30万円程度が多いようです。出会った建築家と相談してみてください。
キャンペーン中で無料の場合もあるようです!

調査・企画業務委託契約書

欧米ではファーストプレゼンに着手する前に契約書を交わさなければプロジェクトがスタートすることはありませんが、日本では暗黙の了解というか、契約が曖昧なまま進められることもあるようですので、それがトラブルの原因になることも多いようです。

建築士法でも、業務に着手する前に「重要事項説明書」による設計契約内容の説明を行い、設計契約をするように規定していますので、契約内容を確認し、不明な点は質問してください。

 

重要事項説明書

 

現況測量

基本設計に着手する前に、まず着手しなければならないのは「現況測量」

敷地面積はもちろんですが、
敷地および隣地との高低、道路やインフラ設備との関係、電信柱や側溝の位置、既存塀の状況、隣接する家のアウトラインや窓の位置を測量することで、正確に設計ができるものです。

現況測量

日影規制や高度斜線が厳しい場合や天空率を使った計画を行う場合は、真北測定を行います。
磁北と真北では東京エリアで7度ほどズレているので、注意が必要です。

敷地の大きさ、形状、高低等によって費用は異なりますが、一般的な住宅規模ですと、現況測量+真北測定で概ね6万円~12万円程度です。

 

基本設計

●基本設計

建て主の希望を、構造的かつ法規的に満足する設計を行うプロセスが基本設計です。
必要な部屋や自分の想いを可能な限り設計者に伝えてください。夢を形にする段階ですから、双方の対話を密にしなければなりません。

 

企画段階でのファーストプレゼンテーションで提案がある場合は、それを叩き台にしてプランを理想型に近づけて行く段階でもあります。
設計者の方では、概ねのコストを勘案しながら設計を進めていますので、希望にも限度があることをご理解下さい。

 

※設計に着手する前に、敷地測量図(前面道路形状や敷地高低差等を明記)をご用意ください。
無い場合には、設計者に相談し測量業者に依頼をすること。
境界確定のされていない敷地では、この時点で、地権者双方立会いのもと境界確定を行います。

 

基本設計図が出来上がりますと、概算見積を工務店数社から取得します。

ここで、工事金額と予算とのズレがないか? 実施設計に入る前に予算内に納めるために計画案を修正したりします。

 

 

地盤調査

 

地盤の状況は一般的に目視できるモノではないので、家を建てる前に地盤調査を行います。
建物がどんなに頑丈であっても、地盤に対する適切な対応を怠ると家が傾いたり、地震の際に壊れやすくなりますので要注意です。

鉄筋コンクリートや重量鉄骨造の建築を計画する場合は、ボーリング調査(標準貫入試験)行いますが、一般的な木造住宅の場合はスウェーデン式サウンディング調査(SWS試験)を行います。

先端がキリ状になっているスクリューポイントを取り付けたロットに荷重をかけて、地面にねじ込み、
25センチねじ込むのに何回転させたかを測定します。

四角い建物も場合は四隅と中央の5カ所測定します。
※坑内水位の測定も必須です!

 

このような調査結果に応じて、地盤が良好でない場合は地盤補強を行います。
参考までに、良好地盤とは、原則として粘性土でN値:3以上、砂質土でN値:5が連続する地層をいいます。

 

実施設計

基本設計で家のプランが概ね決まったら、次にその図面に基づいて実施設計に着手します。

実施設計は、工事業者に発注したり、建築確認申請等の各種申請に提出するために必要な詳細図面を作成していくプロセスです。

 

建物の用途や規模によっては構造計算や設備設計も必要になりますし、各種仕上げや仕様(照明、システムキッチン、衛生機器等)を細部に渡り決定して行きます。

ショールームに出かけて、実際に使用する製品を直接確認することも大切な行為です。

写真左:ショールームでタイル張りの壁の雰囲気を確認             写真右:実際に採用したタイル壁

 

※ここで制作する図面が工事契約図になります。
※建築確認申請をはじめ各種申請手続きには別途申請手数料が必要となります。

 

工事費見積

実施設計図に基づいて工事業者に工事費見積を依頼します。

通常、3~5社にお願いし、見積明細内容が適正で、金額の最も安く、過去の実績等を勘案して工事業者に決定します。

見積比較表の例

見積比較表

同じ条件の工事でも、工務店によって金額に差が出てきますので、とても重要な作業となります。

 

工事契約

決定した工事金額、実施設計図面に基づいて、工事業者と契約を締結します。

工事契約

設計者はこの契約に立会い、工事監理者として契約書に調印します。
万が一、契約に不明な点がある場合には、設計者立会いの基で、覚書等を交すとよいでしょう。

※協議事項は、全て書面にして双方のサインをするようにしましょう。

工事契約が終了した時点で、工事担当者と一緒に近隣に挨拶に行って下さい。
ご多忙の場合は地鎮祭の直前に行かれてもよろしいかと思います。

その際に、概ねの工事規模や工期を説明しておくと良いでしょう。
工事をスムースに進めるには、なにより人間関係が大切です。

 

工事着手前

地鎮祭を行う場合には、日時や方式について工事業者と事前に打合せを行って下さい。
神道式が一般的なようですが、仏式、キリスト教式等、多様な方法があり、また地域によっても異なる場合があります。

地鎮祭

※通常、ご家族、設計者、工事業者の役員、現場監督さんが参加されます。
ここで、関係者が一堂に会しますので、親睦を深めておくと良いでしょう。

ここから本格的な工事に着手するので、工事車両の出入り、騒音等でご近所に迷惑がかかることがあるので、大まかな工程表を持参し、事前に挨拶を済ませておくとよろしいかと思います。

地縄確認

設計図に基づいて、現地で建物の位置と基準レヴェルを決定します。
敷地には地縄を張り、建物の概ねの外郭線を現します。
このときに、設計図どおり隣地境界線からの離隔距離3カ所は最低限確認します。
もちろん、設計者が立ち会っているので、説明を聞きながらの作業なので心配はいりません。

地縄確認

更地の状態では敷地も建物も狭く感じますが、実際に建物が建つと思った以上に広いものです。
広さの錯覚
※人間が空間を認知する際に縦横バランスで大きさを感じるものだからです。
更地の状態ですと、空間の縦方向は”空”になりますので、どうしても狭く感じてしまいます。
ご心配なく!

 

基礎工事

基礎形状に基づいて大地を掘削します。

そこに砕石を敷き、捨てコンと呼ばれコンクリートを打設します。
そのコンクリートの上に墨を打ち建物の正確な位置設定します。

鉄筋コンクリートの基礎の場合は、鉄筋を組み、型枠を組み、コンクリートを打設します。

その際に、土台を繋ぐアンカーボルトや鉄筋のピッチ、さらには鉄筋と方枠との隙間(かぶり厚)が設計通り施工されているかを確認します。

基礎配筋検査

※これらの工事に着手する前に工事業者から施工図が設計者に提出されます。
その図面を設計者が承認した「承認図」に基づいて工事を進めますることが工事の基本です。
そして、工事の過程においても設計者の専門的視点による確認が行われます。

躯体工事

木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等それぞれ形式が異なりますが、家の骨格となる構造体の工事になります。

一般的な木造住宅では、設計図面を基に作成した図面(プレカット図)が工務店から提出されてきます。

プレカット図

設計者がその図面をチェックし、訂正や質疑回答等を行い、施工図としてまとめていきます。

コンピューターがその図面に応じて、木材のカットを自動的に行い、そのカットされた部材が工事現場に搬入されることになります。

それを大工さん達が現場で組み立てて行くという合理的な手法により、工期短縮とコストダウンを実現しています。

建て方

 

上棟

一般的に屋根の頂点となる「棟」が出来上がった時点を「上棟」と呼びます。
木造住宅の場合、主要な構造物の最も最後で、最も高い部分にある「棟」が取付けられることで大まかな構造体の工事が終了します。

この段階はとても神聖な工程とされ、地域性や建て主さんの考え方にもよりますが、
上棟式は、棟梁、大工さんたち、現場監督、設計者への感謝の気持ちを表す意味で執り行われます。

しかし、昔のように神主を招き、屋根の上で神事を行い、その後は親戚・ご近所一同を集めての餅撒きやら直会(なおらい=食事会)となる本上棟まで行う方は、少なくなってきています。

直会
安全性の確保ということもあり、略式で地上で執り行うことが主流になってきています。

屋根・外壁工事

屋根の防水・仕上工事、外廻りサッシの取付工事、外壁の仕上工事等が行われ建物も外観が概ね造られます。
工事用シートで全体が確認できませんが、建築イメージが明確に見えてきます。

実際にサンプルを見ながら色や製品をしてますが、サンプルでみるより実際は面積が広いので予想以上に明るく見えます。
また、全体のバランス等の問題もありますので、設計者に相談しながら決めて下さい。

工法により施工時期が異なりますが、この時点で施工される断熱工事を、しっかりと確認しましょう。断熱材に隙間がないか素人でも確認できます。
不明な点があった場合には、遠慮なく確認してください。

 

 

※断熱工事はランニングコスト(光熱費)に影響します。

 

植栽選定

通常、植栽工事そのものは工事の後半になりますが、建築物の骨格が出来上がり空間のヴォリュームが目視できる段階で、造園屋さんまで樹木の選定に足を運びます。

設計図に位置や樹種が記載してありますが、枝振り、木肌や葉の状況を実物を観て確認し、選定した樹木に印を付けます。

樹木選定

ここで選定した樹木が後日工事現場に運ばれて、施工されます。

内装工事・設備機器取付

内装および建具の色や仕上を決めて行きます。

また設備機器も最終確認を行い、承認後に工事に入ります。
特に、設備機器は取付位置を設計図を基に最終調整を行います。使い勝手を勘案しながら設計者と十分打合せをして決定します。

扉のハンドルやコンセント等の細かい決定が多く、かなり打ち合せ時間も必要ですので、時間をしっかりと取ってください。

※内装工事は、将来メンテナンスやリフォーム等でも変更が容易です。
あまりプレッシャーを感じない程度にし、大まかな要望を信頼できる設計者に伝え後は一任するのも良いでしょう!

審査機関による完了検査

数多くの打合せ、ショールーム巡り、サンプルでの確認等いろんな努力が結晶化してくる段階に入りました。いよいよ完成間近ですので各種の検査が行われます。

官庁または建築審査機関に工事完了届を提出し完了検査を行います。

確認申請書どおりに工事が行われているかどうか等を検査して、適正であると判断された場合には「検査済証」を発行してくれますので、これは大切に保存しておいてください。

※確認通知書や工事完成検査済証は、増改築の際に必要となりますので、一緒保管してください。

この段階で工事の仕上り具合のチェックや設計者による工事完了検査の日程を決めましょう。
また、今の住居や仮住居等からの引越しの段取りにも取り掛かりたいものです。

各種検査

審査機関の検査をパスしても、それは法規的な検査をクリアしただけです。
次のように検査は続きます。

1)工務店による社内検査
2)設計監理者による完了検査
3)施主による完了検査

※愛犬家住宅の場合は実際にペットも連れて行ってチェックをすることもあります。

設計者の立会いの基、工事完成検査を行います。そこで工事の手直しの指示を文書にて工事業者に指示します。

●外部・内部仕上の汚れ、傷、ムラ等のチェック
●建具などの可動状態のチェック
●電気、ガス設備の可動状態のをチェック
●水廻りの給水、給湯、排水状態のチェック
を行い、不備なところがあれば、手直ししてもらいましょう。

工務店が手直し工事予定を速やかに提出して是正工事を行います。
その工事がしっかりと行われていることにより、建物引渡という最終段階に入ります。

引渡し

工事残金や設計監理報酬の最終支払を済ませて、いよいよ引渡しです。
取扱いの説明を受け、説明書のファイルと鍵を受け取ります。
このときに住み始めて発覚するトラブルの際の連絡先等も確認しておきましょう。

木漏れ日屋根の家03

引越し、登記や融資関係の手続を済ませて下さい。

※木造で1年、鉄骨・RC造で2年間、工事の瑕疵担保があります。
現在では品確法も制定され、10年間は構造や雨漏りに対する補償もされています。

 

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注文住宅

土地探し購入検討からの家づくり注文住宅を建築家と実現する

著者情報

前田 敦 / atsushi-maeda

前田 敦 / atsushi-maeda

犬と猫と快適に暮らせる社会の実現を目指して、ペット共生住宅に特化した設計活動を行っている建築家
設計作品の中でも特に注目すべきは、ペットがストレスなく自由に走り回れることを重視して設計した「スロープの家」シリーズです。これまでの住宅設計にはない新しい発想から生まれたもので、独創的なコンセプトと緻密な設計が注目を浴び、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞といったさまざまなメディアで紹介されています。

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前田 敦の専門性について

執筆・監修・報道・取材